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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)1449号 判決 1992年12月16日

大阪市西成区山王一丁目九番七号

控訴人

北畑靜子

同所

控訴人

北畑實

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

後藤田正晴

右指定代理人

竹本健

金政真人

池上佳秀

前田登

山田弘一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人北畑靜子に対し、金七二万二、〇二八円及びこれに対する平成三年八月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人は控訴人北畑實に対し、金二、八七五円及びこれに対する平成三年八月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  事案の概要

次のとおり付加するほかは、原判決の「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、三枚目表八行目の「第一〇七号」を第一〇八号」に改める。)。

(控訴人らの当審における主張)

1  本件各物品に関係する旧物品税法の下では、古物の取引には物品税は課されていなかったのであり、同法は消費税の創設に伴い廃止されたが、消費税法には古物に消費税を課税するとの規定がないのであるから、古物に消費税を課することは憲法八四条の定める租税法律主義に違反する。

2  消費税法は、消費者同士の売買には消費税を課さないものであるから、憲法一四条の定める法の下の平等に反する。

三  当裁判所の判断

次のとおり付加するほかは、原判決の「第三 判断」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人らの当審における主張に対する判断)

1  消費税法四条一項は、課税の対象として「国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」と規定し、同法五条一項は、納税義務者として「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。」と規定し、同法六条は、非課税につき「国内において行われる資産等の譲渡のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。」と規定し、右の「事業者」、「資産の譲渡等」及び「課税資産の譲渡」等の意義については同法二条において定義されており、その他、課税標準及び税率についても同法二八条、二九条で定められている。右のとおり、消費税の課税要件は同法により明確に規定されており、かつ、同法には、古物営業法一条一項にいう古物の譲渡について消費税を課さないことを定めた規定はないし、他の法律にもそのような規定はないから、事業者が行う古物の譲渡についても消費税の課税を免れないのであり、そのことが、租税法律主義を定めた憲法八四条に反するものといえないことは明らかである。また、控訴人らの主張する物品税法の下においても、同法所定の課税要件が発生するかぎり、古物についても物品税の課税を免れなかったものと解されるから、控訴人らの右の点の主張も理由がない。

2  消費税は、「事業者が行った資産の譲渡等」を課税対象とするものであり(消費税法四条一項)、右の「資産の譲渡等」とは「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」をいう(法二条一項八号)から、消費税の対象となるのは、「事業者が事業として」行う取引に限られる。これは、消費税が、消費一般に広く薄く負担を求めるものであり、円滑かつ適正な転嫁が行われることを予定したものである(税制改革法一〇条、一一条)ところ、課税対象を右以外の取引に及ぼしても、把握が困難であり、また、税収可能性が少ないことなどを考慮して、課税の対象を限定したものと解され、立法政策に基づく合理的な理由があるものというべきであるから、このことをとらえて憲法一四条に反するものとはいえない。

四  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。

(裁判長裁判官 中川敏男 裁判官 渡辺貢 裁判官 小松一雄)

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